研究所について

日本赤十字看護大学附属災害救護研究所について

所長挨拶

所長:富田 博樹

所長富田 博樹

(学校法人日本赤十字学園
理事長)

令和6年1月1日に発生した能登半島地震で亡くなられた多くのみなさまに衷心より哀悼の意を捧げると共に、被災されたみなさまにお見舞いを申し上げます。そして、被災地の1日も早い復興を心より祈念しております。

日本赤十字社は発災直後から本社、全国の支部・赤十字病院から被災地に救護、救援の人員を大規模に派遣し、医療救護、こころのケアなどの被災者支援とともに、毛布(16,005枚)・安眠セット(5,230セット)・緊急セット(2,224セット)・仮設トイレ(3,400個)などの救援物資を送りました。救護班は343班、日赤災害医療コーディネートチーム119チーム、こころのケア班37班、赤十字ボランティア1,688人が現地で活動しました。研究員の多くも支援活動に参加したことから、令和6年2月に開催した第4回研究所セミナーにおいて緊急報告を行い、さらに活動から得られた課題を含め「令和6年能登半島地震報告書(速報)」として纏め、今後の活動に生かしていく所存です。

さて、研究所発足後3年目となり、研究員は51名に達し、その所属は赤十字病院、赤十字看護大学、本社、支部そして外部からと広い組織で構成されています。
研究所の各部門が活発な活動を行ない、学会優秀論文賞や研究奨励賞を受賞するなど、本研究所の活動への高い評価が得られています。
また、2024年2月には、災害救護部門の高階謙一郎副部門長(京都第一赤十字病院)が会長として第29回日本災害医学会総会・学術集会を京都にて開催し、全国の赤十字病院、本社、支部、その他関係組織などの支援と、本研究所の総力を挙げた応援のもと、参加者は従来より1,000人も多い過去最高の3,100人に達し成功裏に終わり、日赤の主たる役割である災害救護の歴史に残る成果となりました。

本研究所の主要な目的の一つが、研究成果を現場に還元することです。防災減災部門や心理社会的支援部門が成果物としてリーフレットを作成し、赤十字施設に配布しました。さらにコロナ対応に従事した赤十字病院職員への大規模なメンタルヘルス調査研究では、全国赤十字病院の63施設、3,815名の職員の協力を得て、各病院が行なった心理社会的支援の効果を確認することができました。この結果を全赤十字病院の現場に還元し、さらに論文として国際ジャーナルに掲載しました。これらは本ホームページに掲載しています。

加えて災害救援技術部門や国際医療救援部門・国際救援部門が、病院、大学、企業と協力して、様々な設備、機器、器具を開発し、本研究所の目指す姿の研究が着々と進んでいます。

国際活動としては、本社国際部の協力のもと、トルコ赤新月社との国際シンポジウムを2023年10月に開催しました。両国とも地震大国とも呼ばれる自然災害多発国の赤十字社・赤新月社であり、共に研究所を有している特徴を踏まえて、その知見の交換を行いました。
また、研究員による、まだ終わりの見えないウクライナ避難民への心理社会的支援体制の構築など、本研究所の活動が世界に広がっています。

本研究所設立以降、毎年、活動報告を行なっており、キックオフセミナーから数えて計4回の研究所セミナーを開催し、その参加者数は累計で約1,400名に達し、赤十字施設はもとより、赤十字以外からも広く様々な方に参加をいただいています。

日本赤十字社の災害救護活動は、戦後(1952年)に制定された日本赤十字社法上の業務として「非常災害時又は伝染病流行時において、傷病その他の災やくを受けた者の救護を行うこと」と明記されており、日本赤十字社(以下日赤)にとって、最も重要な活動の一つです。近年異常な頻度で発生している自然災害への積極的な救護活動はもとより、コロナ禍への対応など、日赤職員の活躍は目を見張るものがあります。
我が国の災害対応は、阪神・淡路大震災を契機に急速に発展し、医療だけでなく、被災者の生活を支える様々な分野の組織・団体等が参画して協働するようになりました。その活動は年々改善され、大きく進化し続けていることは、我が国のみならず、世界の趨勢ともなっています。こうした災害救護を取り巻く変化のなかで、将来にわたり日赤が国内外問わず災害救護活動に貢献するためには、長年の経験で得た知見を学術的に分析・集約して社会に還元するとともに、新たな知見や技術を積極的に活用するための調査研究を行うことが必要です。

こうしたことから本研究所が日本赤十字看護大学の附属施設として設置される運びとなりました。守田学長のもと、私が初代所長に就任し、学園本部及び日赤本社の協力も得て運営されています。研究員は研究所からの依頼をベースとしていますが、日赤職員の皆様の中で、ぜひ参加したいとの意欲のある方は大歓迎です。勿論、日赤以外の組織からの参加も期待しています。客員研究員のポジションを用意しています。
この研究所の活動が我が国の災害救護を牽引することを願います。そして、日赤がすべての被災者・被災地を支援し続ける力となり、災害救護における「要」となるよう努力することを切に願っています。

副所長挨拶

副所長:井村 真澄

副所長井村 真澄

(日本赤十字看護大学大学院
国際保健助産学教授)

このたび、赤十字のアカデミアである日本赤十字看護大学に災害救護研究所が誕生しました。赤十字活動の核心である、人々の生命・尊厳・生活を守り抜く組織として始動します。

本研究所は、遡る1864年の「国際人道法」(ジュネーブ諸条約)締結に基づく国際赤十字組織誕生、1877年博愛社(1887年日本赤十字社と改称、以下日赤)誕生から今日に至るまで、活動する赤十字有機体DNAを受け継いでいます。

世界有数の災害多発国日本での先進的な活動、日赤の国内外での支援活動実績等を集積し、研究・開発を発信し、さらに次世代育成のための活動ベースキャンプ、協働プラットフォームとして機能していきます。

各部門には、実践と英知を発信する日赤内外の精鋭メンバーが集結しています。多様で複雑化する災害対して、当事者にとって必要な重層的支援を行うことのできる多職種協働連携を具現化した組織チームを構成し、部門横断的にも活発に活動していきます。志高い皆様の参画と協働も大いに歓迎しています。

超急性期から平穏期の各災害サイクルを連続的にカバーし、災害時要配慮者を含む新生児から高齢者までの全世代に対して、だれ一人取り残されることのない支援を目指します。
 
Leave No One Behind、だれ一人取り残さない支援-これは大変困難を極め、その実現に向けて、日々、非力・無力を感じる現実に直面します。しかし、だからこそ、ここを新たな出発点とし、日赤内外に広く開かれた本研究所のミッション実現に向けて、皆様と力を合わせ、発展的に活動を推進してまいります。

(2022.03.14)

設置目的・目標

2021年6月に「日本赤十字看護大学附属災害救護研究所」として発足した、その設置目的、目標、主な活動内容を紹介します。

1.設置目的

  1. 日赤の救護活動を中心とする諸活動等で得た知見を広く社会に発信・還元するとともに、災害救護に関する研究・教育活動を通じて
    我が国の救護の質・量の向上と活動領域の拡大に寄与することで、被災者の苦痛の予防・軽減に資する。

2.目標

  1. 日赤の有する災害救護の知見を集約し、実務的に利用可能な形に発展させる。
  2. 新たな知見・技術に関する研究を実施し、日本赤十字社の活動に還元し、我が国及び国際赤十字の災害救護の発展に貢献する。
  3. 主要な関連学会等において積極的に研究成果の情報発信を行うとともに、これら学会等の運営に積極的に貢献する。

活動内容

  1. 災害救護に関する調査研究活動(主な分野の例)
    災害医療・災害看護・国際医療救援・心理社会的支援・災害ロジスティクス・救援物資・
    被災者生活再建支援・防災減災・高齢者生活支援等
  2. 災害関連の研究及び教育成果の積極的な発信
  3. 災害関連に関する教育活動
  4. 日赤本社(救護・福祉部等)から委託された業務の実施
  5. 災害関連の主要な学会等における研究成果発表及びこれら学会等の運営にかかる主要な立場からの積極的な参画 等